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ExSAX 

HIDEKI TACHIBANA

ALTOSAXOPHONE

SOLO  WORKS

イクスサックス

立花秀輝

アルトサクソフォーン・

ソロ作品集

渋さ知らズでお馴染みの立花秀輝によるアルトサクソフォーン・ソロ作品集。既存の奏法から立花のオリジナル奏法まで、サックスの常識を打ち破る様々な特殊奏法による12曲を収録。多重録音や機械的特殊効果を使わず、サックス一本での限界に挑戦する意欲作!!

ExSAX jaket .jpg

01. My History lol 履歴(笑) 
02. Beat of Wind 風の鼓動
03. Spring Breeze 春風
04. Slapstick Tongue and Claws  ドタバタ舌と爪
05. Hard Days  大変な日々
06. Sometimes Like Percussion  時にはパーカッションのように
07. Beautiful Vibration  美しき振動 
08. Metamorphosis  変態
09. Sucking Sax サックス吸ってみた
10. Hikouki  飛行機 Composition by Daisuke Fuwa   作曲:不破大輔 Lyrics by Takuboku Ishikawa  作詞:石川啄木

Overlapping Trilogy 織り重なる三部作 
11. part 1 Debut  その① デビウ
12. part 2 Duet   その② デュエット
13. part 3 Dance  その③ ダンス


14. Pray 祈り

MEIKAI RECORD BAN-001定価:2000円+税 2022年9月23日発売

​サックス奏者・坂田明氏、漫画家・石塚真一氏、小説家・田中啓文氏より、とても読み応えのある推薦文を頂きました!!

立花秀輝の新作soloを聴いてから書いてみる。

 さて、この作品は「へめらも」である。あれこれしてまって、しまいながらも夜空の彼方へ空中分解しながら組み立て続けるのだから始末が悪い。今更言うまでもないことだが、この宇宙ではあらゆるものは壊されながら作り続けられている。万物流転と言ったり諸行無常といったり、横断歩道は手上げて、など、人類は下手にものを考えるから、分からないこの宇宙に手を焼いてそういう事にしてきた。色即是空、空即是色、夏の盆踊り、という有様だ。曰く、たんぱく質は点滅している!アミノ酸がペプチド結合して連なりポリペプチド結合になる。結合しているからガシッと繋がっているのかというとそうではないらしい。体を作っているあらゆる組織は常に組織が作り替えられている。だからいつでも簡単に分離されるし結合される。つなぎ目の水酸基(OH)とカルボキシル基(COOH)は点滅するがごとく振動しているらしい。これが結合の正体だ。例えばいま目の前に見える自分の手はあるのだけど、そのすべての細胞は常に新しいものに作り替えられているし、その間体温は保たれ、運動するエネルギーは作られて消費されながら、様々な物質が細胞の中に出入りしている。しかしこれは目には見えない。腹がへったら食べて、のどが乾いたら水飲んで、代謝されたものは排泄されている。その中で起こっている生命活動。それは「動的平衡」という状態が体の中におきているという事らしい。だから生命活動は「動的平衡」で説明できるといってもいいぐらいらしい。オーネット・コールマン!

人間はそこで起こっていることが何なのかを言葉にしないと不安で生きてられなくなるらしい。
「こんなのジャズじゃない!」
「えーつ?!」
「こんなの民謡じゃない!」
「ええっ!じゃあ、何なの!?」
「なんで決めなきゃいけないの?!」
「すべて音楽でいいんじゃないの?!」
直立猿人!ガダハダ ダダダ!

ところが、人間も含めて動物は生理的に受け入れやすいものとそうでないものははっきりしている。フランク・ザッパ 大雑把! 「私ねえ、ねぎは嫌いなのよ」

我が家に「瑠璃子」という名のウェリッシュ・コーギー4歳がいる。詳細は省くが、この犬は掃除機の音が嫌いである。家人が掃除機をかけるとわんわん吠える、怒ったって駄目だ、瑠璃子は掃除機の音を聞くのが嫌なのである。人間には聞こえない超音波が聞こえるらしい。散歩中にバイクがそばを通ると攻撃しようとするから、事故になりそうになる。ある種のエンジン音が嫌いらしい。耐えられない音というのがあるのだ。それは、その音が何なのかはどうでもよいのであって、すぐやめてもらいたいだけだ。

「直ぐやめて!さあやめて!今やめてったら・・・、もうおおおお、分からないの!!!」

しかしながら、この世界にはそういう音が好きというのがある。たとえばF1レース場の爆音である。鈴鹿サーキットのR3コーナーだったと思うが曲がりくねったカーブを抜けて最先端技術の結晶F1レーシングカーが一気に直線のホーム・ストレッチへ突っ込む。各車一斉にフルスロットルとなる。エンジンの爆発だ。エリック・ドルフィー

来たあ!
「ぐわん、ぐわん、ぐわーーーーーん」
次々とくる「ぐわん、ぐわん、ぐわーーーーーん」
「ぐわん、ぐわん、ぐわーーーーーん」
「ぐわん、ぐわん、ぐわーーーーーん」
これが一体なんであるかはどうでもいいことだ。快感以外の何でもない。

「行け― 行け― 行け― ― 行っちまえ!!!!!!!!!!!」
およびタンヤオ、サンシキ、イーペーコー、ドラドラドラ!!!まにがにだ。という有様だ。

観客席は大興奮。大化の改新、応仁の乱、団の面目丸つぶれ、岡本理研、解体新書、天才バカボン、アレキサンダー大王も再登場しちゃうぞ!って!

2022年7月7日(牽牛と織女)

坂田明(サックス奏者)

僕はミュージシャンじゃないから、誰かの音楽が良いとか悪いとか、批評みたいなことは言えないし、言わない。けれど、「立花さんのサックスって良いよね。」とは誰にでも言える。それくらい立花秀輝のサックスが好きだ。

ここで、「立花秀輝のプレーするサックス」を略して「立花サックス」と呼ばせてもらいます。

さて、立花サックスの何が僕を魅了するのか?これは難しい、、、。立花サックスを(特に生で)見たことのある人なら頷いていただけるハズだ。情熱的?躍動?疾走?奇想天外?飛んでる?ヤバい?なんじゃこりゃ?色々な言葉が浮かんでくるけれど、明確に「これ!」という言葉が当てはまらない。今回のソロアルバムにも同じことが言える。立花サックス、そしてこのアルバムを形容するのは容易ではない。形容されるのを拒んでいるのかどうかさえ分からない。「アーティスティックなアルバム」と言えなくはない。だがそれだと難解な曲ばかりが並べられてるイメージを持ってしまいそうだ。そうじゃない。胸にストンと落ちる曲もちりばめられている。この感覚は何かに似ている、、、、。

、、、人。人は分かるようで分からない。そう思いませんか?親子でも、友人、恋人。短い関係、何十年におよぶ長い付き合いの関係。人は実に豊かな、そして難解な個性を宿していると思います。似てるような人でも、付き合ってみるとその個性は人それぞれ、とてつもなく違う。立花サックスはそんな分かるようで分からない、「人間らしい音楽」なのだと僕は思う。

このアルバムを手にするのが先か?立花さんのライブを見るのが先か?それぞれ違うと思うが、アルバムが先だった人には、ぜひ「人間音楽立花サックス」のライブに足を運んで欲しい。僕はジャズが好きで、色々なライブを見に行ったが、圧倒されたライブは少ない。立花さんのライブも幾度か見たが、いつも、心底圧倒される。圧倒されなかったことがない。ニューアルバムゲットを機に、ライブを見に行こうと思う。圧倒されるのは、とても素敵なことだから、、、、。

石塚真一(漫画家)

 アドルフ・サックスが発明したサキソフォンという楽器は、管楽器のなかではよく知られていて、ジャズ、クラシック、吹奏楽、ロックなどで幅広く使われている。だから、たいがいのひとが「こういう音色でこういう演奏をする楽器」というイメージを持っているだろう。しかし、このアルバムには「こういう音色」も「こういう演奏」も出てこない。同じサックスという楽器から、こんな「あさって」いや「しあさって」の音が引き出せるなんて驚愕ではないか。しかも、つぎつぎと、ずるずると。
 これはサキソフォンの「特殊奏法」と呼ばれるもので、グロウル、マルチフォニックス、サーキューラー奏法、各種の特殊タンギング、タンポをぱたぱた鳴らす音、リードの軋みなどなど従来知られている奏法に加えて、立花秀輝のオリジナルな奏法が山のようにぶちこまれていて、まさに「サックスの特殊奏法のデパート」状態である。立花秀輝はどうしてこんなことをしたのだろうか。――わからん! でも、すごい。
 正直、特殊奏法という言葉に身構えなくても、すべての先入観をなくして無心で聴けば、この演奏のすばらしさはわかってもらえると思う。サックスという楽器から、予想もしていないような音の数々がつむぎだされ、しかも、それらが壮大な音楽として紡ぎあげられ、どの演奏も「曲」として成立しているのだ。テクニックの羅列ではなく、ここには諧謔や怒り、喜び、ユーモア、悲しみ……などすべての感情が詰まっている。よく「変態的奏法」などというが、これらの演奏は変態どころか美しさの極みなのである。いや……やっぱり変態か。
 本作はフリージャズやインプロヴァイズド・ミュージック、ノイズなどの聴き手だけでなく、吹奏楽やクラシックなどでサックスを演奏しているひとたちにぜひ聴いてほしい。そして、自分が日頃吹いているこの楽器はこんな音も出せるのか、と目からウロコをぼろぼろ落としてほしいと思う。そのうえで立花氏に向かって叫んでほしい。「どうしてこんなことをしたのだ!」と。

田中啓文(小説家)

 ありがとうございました!! 

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